トップページ → ゲーム詳細 → ストーリー
ストーリー 世界と人物 システム
プロローグ    青年と老人  邂逅    追憶  深淵
プロローグ以外はゲーム本編で使用する物です
ネタバレ要素が非常に強くなっています
スタッフ参加の判断基準として閲覧して頂ければと思います

青年と老人

部屋

麗らかな陽光は青年を世界に連れ戻した
覚醒する意識と開かれる扉
老人との出会いは契機か過程か

事の仕舞いか



ゆらゆらと揺れる
ゆらゆらと
穏やかな波間に漂うように

ゆらゆらと暖かく
柔らかな――


青年
「…………!」
「…………こ、ここは?」

先程までの景色は何処に消えたのだろう?

軽い痛みを感じながら首を捻るが
近くに少女の姿は見当たらない
視野に収まるものといえば
珍しくもない寝室の眺めだけだった

頭痛を堪えて部屋全体を見回すと
白いカーテンの隙間から流れ込む
一条の光線が妙にまぶしく目に染みる

手をかざして光を遮ろうとすると
穏やかな暖かさが腕に伝わり
じわりと心地よさが広がっていく

耳元では時を刻む針の音が断続し
更に耳を澄ませば樹林のざわめきに紛れ
小鳥のさえずりやはばたきが聞こえてくる

先程までの光景が何処に消えたというのか

――違う

何のことはない

青年
「……夢を見ていたのか……」


「……だとしても、ここは何処なんだ?」


ドアが音を立てて押し開けられた
ひょっこり老人が顔をのぞかせる


老人
「フェッフェッフェ……」
「ようやくお目覚めかね。
 ワシの工房にようこそ」


ラス
「……あなたは?」

老人は怪訝そうに眉をひそめた

老人
「……お主、このワシを知らんのか?」

「ワシはハツメイ。
 古今無双の天才発明家にして
 前代未聞の骨董蒐集家じゃよ」

「……そしてボロボロの身で行き倒れとった
 お主を見つけてしもうたのもこのワシなのじゃ。
 少しばかり感謝してくれても神罰は降るまいよ」


青年
「あなたが、僕を助けてくれたんですか?
 ……僕は行き倒れていた?」


ハツメイ
「うむ。そう言っておろう。
 悪くとも寝首を掻く意図がないことは
 お主も承知してくれるのではないかね」


青年
「……あ、いえ。
 そんなつもりで言ったわけではなくて……」

「助けて下さったことに感謝しています。
 本当に、ありがとうございました」


ハツメイ
「よいよい、実際大したことはしておらんさ。
 廃坑からここまで、君を運んだだけなんじゃからな」


青年
「……廃坑?」

夢に見た場所がそうだろうか?
そんなことはない――筈だ
あれは廃坑なんかではない

そもそも夢は夢に過ぎない

青年
「……だとしたら
 そんなところで僕は何を……」


本当に何をしていたのだろうか?

手繰り寄せた記憶の糸は途切れ途切れで
自分自身の行動と思えないほど
どうにも支離滅裂で漠然としている

試行錯誤して辻褄を合わせていくと
一貫性のある流れを導き出すことはできたが
何か致命的なものが欠けている

――何か忘れている気がするのだ

もう少し記憶を吟味しても良かったが
あまり老人を待たせ続けているのも問題だった


青年
「…………少し思い出してきました」


ハツメイ
「ホッホホゥ、思い出したと言うのかね……。
 君は何を思い出した?」


青年
「僕はラスと言います。
 あの廃坑では古文書を探していました。
 ……残念ながら、空振りでしたけれど」


ハツメイ
「フェッフェフェ、廃坑で古文書探しとな……。
 若さに似合わず良い趣味をお持ちの御仁よの」

「その古文書とやらは、どのような書なのかね。
 少し興味が湧いたよ」


ラス
「ハツメイさんは『エルドラの書』をご存知ですか?」


ハツメイ
「……フム」
「無論、その名は聞いたことがあるな。
 もっとも詳しいことまでは識らんがのう」

「残念じゃなあ、残念じゃい。
 ワシの不得意分野ど真中ということじゃ」


ラス
「……そうですか」


ハツメイ
「まぁ、気長に探すしかないのじゃろうて。
 お主はまだ若い。時間は十分にあるはずじゃ」


ラス
「そうかもしれませんね。
 きっとまだ時間はある……」





戻る


ゲーム詳細に戻る