かつて栄えた大国家「エルドラ」は
巨万の富と無限の英知を誇っていたとされる
しかもその富と知はただ一冊の「書」により
もたらされたものだと言われていた
名高き「書」の存在は多くの動乱を巻き起こした為
多量に複製され、全世界に等しく与えられることになった
人々は「書」に書き記されたものに驚いたが
同時にそれを利用する事で世界を爆発的に進化させた
しかし、進化にかげりが見えだした頃、
ある「噂」が囁かれるようになった
「書」には複製されなかった部分がある……
その「噂」は、何時しか全てを巻き込み
「書」の元となった「原書」をめぐる大きな動乱を引き起こした
事態を重く見た「エルドラ」の王は
戦いを終わらせる為に「原書」を焼き払わんと決意する
皆の前で激しく燃やされる「原書」
本物の「原書」が焼失したという事実が広く伝えられると
戦いは収束し沈静化していった
それから数百年……
爆発的に増産された食糧、資材
万病を癒す良薬、医療技術
それら世界を豊かにするあらゆるものが
『鉄の馬車』の力で遥か彼方まで送り出される時代
幾多の戦乱に巻き込まれながらも
世界は新しい繁栄の世紀を謳歌していた
ゆえに歴史は繰り返し、再び噂が湧き起こり始める
焼き払われた「原書」には失われたページが……
焼失を逃れたページがある―――
深い眠りに就いたはずの『書』
それを呼び覚まそうとする者達の中に
一人の青年の姿があった……